日本レストランでバイトしてみたら③【面白いお店 / 上】

昔の出来事

ボストン滞在の間、僕はいくつかのお店で働きましたが、「面白いお客さん」と同様に忘れられないのが「面白いお店」や「面白いオーナー / スタッフ」。

よく「海外に住んでいる日本人には変わってる人が多い」というセリフを聞いたことがありました。
中には「アメリカに留学してくる女子なんか性格がヘンなのばっかり」という人までいて、「それはアナタの偏見じゃねーの?」と思ったものでしたが。

しかしよく考えてみると、確かに変わった印象を受ける人は多かった気がします。
ボストンに住んでいる日本人の数なんてわずかなもので、現在でも一万人程度。その多くない人数の中で、あれだけ面白い、ちょっと個性的な人々に会ったということは、やはり「そーゆー人の比率は高かった」と言って良いのかもしれません。

そして、そういう人たちがまた僕のボストン生活を「面白可笑しく、記憶に残る」ものにしてくれたのですが。

今後そういった人たちにも続々とここにご登場いただく予定ですがw、今回はレストラン関係で記憶に残った人や出来事を少々。

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かつて超有名店で修業したオーナー

そのお店は「日本人ではない」オーナーさんの経営でしたが、売り文句が「我々はかつて和食の名店『N』で修業した」というもの。

『N』といえば、アメリカのみならず世界中に支店を持ち、ニューヨークにもお店を構えている超有名店。

そこでかつて修業をしていた、とオーナーは新聞のインタビューでも語っているのですが、なんか、どうも怪しい気がして。
僕は最初から半信半疑。

そのお店でホンの短い間アルバイトをしていた時の話です。

ある日、カウンターに座ったアメリカ人のお客さんが、オーナーに「アナタは昔はNに居たんだってね。あそこは凄い店だね」と話しかけてきた。
オーナーもあれこれと得意気に答えていたのだけれども。

そのお客さんに、「ところで、Nの経営者は何という名前?」と聞かれて、ピタリと喋りが止まった。

そのあと急にセカセカとネタの在庫を調べたり、シャリの残りを確かめたり、裏のキッチンに何かを取りに行ったりし始めたと思ったら … 。

ウェイターである僕の横にスッと近づいて、小さな声で耳打ちをしてきた。

「… おい、Nの経営者の名前何て言うんだ?知ってるか?」

ほらね!やっぱり嘘じゃねーか!!
\(^o^)/

僕が小さく「… ○○ですよ」と教えると、そのお客さんに
「彼の名前は○○だヨー。○○はナイスガイだヨー!」と満面の笑顔で答えていた。

立派な経歴詐称!
とんでもねえタヌキだな、このオッサン (^^);

でもどうせウソつくなら、その店のオーナーシェフの名前くらい調べておけよって、思いませんw?

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チキンすき焼きって、何?

これはお店の外での出来事になってしまうのだけど。

ある日、以前に働いていたお店のオーナーのおばさんから電話がかかってきた。

なんでも、今度アメリカの人たちに日本の文化を教えるプログラムを一泊二日で行うことになったのだという。
会場は市民センターみたいなところを借りて、日本語の授業、折り紙や手芸などのクラス、そして日本食の夕食会も行うそうで、講師役の日本人スタッフも数名来るということでした。

で、僕にその夕食の調理のお手伝いのアルバイトをやらない?というわけです。

即、行きます!と答えた。 
だってお金無かったんだもん。

さて、当日教えられた場所に行ってみると、20数名のアメリカ人の生徒さんが楽しそうに「折り紙」の授業を受けているところでした。

僕はさっそく大きなキッチンに入り、その日の手順について聞いてみたのだけど、なんとメニューは「チキンすき焼き」だという。

チキン、すき焼き??

あの~、すき焼きって牛肉ですよね? あるいは豚肉とか。
鶏肉のすき焼きって聞いたことないんですけど、大丈夫なんですか?
… と聞くと、

「大丈夫よ!高い肉なんか使ってられないわよっ」

えっ!!そういうこと言う??
それじゃすき焼きじゃなくなっちゃうんじゃないかと….。

しようがないなあ…(><) と思いつつ、用意されている大袋の材料を調理台の上に並べてゆく。

お米と、お味噌と、お味噌汁の具と…..。

そしてすき焼きの材料は、
鶏肉、
長ネギ、

以上!

え?

なんで?
豆腐も白滝も春菊もシイタケも無いの?

「平気よ。アメリカ人なんかに分かりっこないわよ!」

ええええええ~~~~~!!!
そういうこと言う??
てか、やる??


これはいくら何でもマズいんじゃないかと思ったのだけど、ただのお手伝いにはどーすることも出来ません。
仕方ないからそのまま調理に入りましたよ、ええ。

ここからは参加者であるアメリカ人の生徒たちもキッチンに入って来て、調理の様子をお勉強。

① まず鶏肉を一口大に切り

②フライパンで炒めます

③醤油、みりん、砂糖、お酒でタレを作り

④ ②に絡めます

⑤ お皿に盛りつけて、5センチほどのブツ切りの長ネギを添えます

(オバさん)
「ハイ、皆さん!ディス イズ チキンスキヤァ~キィ~~!!」

(全員)
「オオ~~~~~~~~~~~っ!!!」



 … みんな、ゴメンね 💧

あの時の罪悪感といったら … 。

日本の文化を教えるっていうイベントで、こんなモン出しちゃって。
生徒はちゃんと参加費払ってるんだろうに。


まあ、その後はわりと楽しく賑やかに進んでいきまして、みんなの前でお味噌汁を作る時には、大鍋に袋入りのお味噌をニュル~~~~ っと入れながら、「ちょっと、何かに似てますねえ~!」とか言ったら結構ウケちゃったりね (^^);

食事の用意が全て終わったところで僕の出番はおしまい。
帰路に着きました。


【続く】


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