ボストンマラソン爆破テロ事件③

ボストン生活

テレビでは複数のチャンネルで緊急ニュースとしてこの爆破事件を報じているのだけど、何回映像を見ても爆発が起こったのは僕らが応援のために行こうとしていた、あの場所だ。

「これは、嘘じゃないんだよな … ?」
どうしても信じられないのだ。

多くの死傷者を出したあの場所から、仮に少し離れた辺りで応援していたとしても無傷ではいられなかったかもしれないし、ましてや「あそこ」に立っていたとしたら。

あまりの事に、恐怖感は湧いてこない。
ただただ、信じられない。

ちなみに爆発したのは、圧力鍋の中に釘やボールベアリングを仕込んだ手製の爆弾だという。


さて、こういう時のアメリカという国の行動の早さ、徹底さというのは物凄いものがあって、現場周辺の防犯カメラなどを調べて、あっという間に容疑者を特定してしまった。

未曽有の大地震が起きたというのにその対応が遅れがちになったりする、どこかの国とは大違いだ。

事件が起きた日時は2013年4月13日、現地時間の午後2時45分ごろ。
連日の報道により、2回の爆発で3名が死亡し200人近くの人が重軽傷を負ったこと、そして犯人はチェチェン共和国出身の若い男の兄弟で、当時兄が26歳で弟は19歳であることなどが分かってきた。

もちろん現場であるゴール地点周辺の広いエリアは立ち入り禁止となったままで、ボストン及び周辺の街は、その12年前の2001年に起きた「同時多発テロ事件」のとき以上の緊張感に包まれ、人々は外出を自粛し始めた。

それはそうだ。
多くの武器を持っていると思われる爆弾犯人が、どの町のどの辺りに潜伏しているのか分からないのだ。
その恐怖感たるや、である。

そして続いて犯人は、爆発の数日後に隣のケンブリッジ市にあるマサチューセッツ工科大学(MIT)にて警察官一名を射殺。

その後一般市民から乗っ取った車で逃走し、再び姿をくらませた。

さて、であります。
そんな街中が凍りついている状況でも、やらなくてはいけないことがありまして。

そう、お仕事です。

僕の仕事は観光ガイド。
この時もボストンには日本から多くの観光のお客さんが来ていましたから、我々もそれにどう対応していくかを早急に決めなくてはいけません。

彼らをいつものツアーのように街中へと案内するわけにはいかない。
かといって、そのままホテルでずっと缶詰め状態にしておくのも申し訳ない、という悩ましいところでございます。

そして、とりあえず今は続報を待ちながら、市内観光はしばらく見合わせて郊外の名所ツアーなどに振り替えての催行を提案しようという事になったのですが

で、す、が … 、

中には驚くような判断をした人もいて。

ある責任者は、中心地にあるホテルに滞在しているグループ旅行のお客さんたちのところまで「ご様子伺いの挨拶に行ってくるように」自社の担当ガイドに命じたという。
「お客さんの不安を解消してあげることが大切です」ということらしい。


僕はそれを聞いて「バカ野郎!!」と思った。
あのホテルは先日警察官が射殺された現場と同じ市内で、1キロと離れていない。
そんなところに車でのこのこ出かけて、万が一何かあったらどうするんだ!

なによりこの指示には、そのガイドさんのご家族が怒ったという。
当たり前だよ!

どこの世界にも、事あるごとに「判断を誤る」タイプの人はいる様ですが、あれは頂けない、マジで。

ちなみにその会社、もうありませんけどね。

さて、そーこーしているウチに、こんどは僕の番。
担当のお客さんは30名のグループで、今日が市内ツアーの予定日。

宿泊先は郊外のホテルだから、お迎えに行くのは問題ないだろう。
ならば、やはりそのまま郊外の名所ツアーに切り替えてご案内しようということになり、いざ出発。

でも、この時は正直ちょっと緊張しました。
僕の住まいも割と郊外だし、近くの高速道路にすぐ乗れちゃうから、犯人にバッタリ!なんて心配はないと思うんだけど。
しかしパトロール中の警察に見つかったら「自宅に帰りなさい!」って言われるかもしれないし。

結果はすんなりと高速に乗れて、お客さんの待つホテルへと向かえました。
まずはめでたしめでたし!


… ですけど、この翌日に僕は再びわが目と耳を疑う羽目になります (><);

逃走中の犯人兄弟は Watertown(ウォータータウン)という街で警察に発見され、そのまま爆弾や手榴弾をも使った壮絶な大銃撃戦となり、最後は弟が車で逃走するときに兄を轢き殺し、そのまま逃げ切って再び姿を消すという大事態に。

そのウォータータウンは僕の住まいのすぐ隣の町で、その銃撃戦の現場もわりとよく通るエリアの一角でした。


なんというか、この時はもう … 、

俺やっぱりアメリカに住んでるんだな、とあらためて思わされた。
ここではこんな事が住まいの近所で起きてしまうんだ、と。



【続く】


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